第一章 心の傷

我が国には祖霊信仰と仏教が融合した「お盆」という行事があり、その時期は元々旧暦の七月十五日を中心とした四〜五日間だった。

しかし、明治になって太陽暦(新暦)の採用により多くの伝統的行事が三十日遅れでの実施になると、お盆の時期も七月十五日前後の「新盆」と八月十五日前後の「旧盆」に分かれた。現在都内では圧倒的に「新盆」の家庭が多いのだが、何故か我が家は「旧盆」である。

お盆になると離れて暮らしている子供たちも帰省し、一家揃って墓参りをして先祖を供養するのが慣わしであり、その家族の輪の中に浄土(天国)から「お盆帰り」していらしたご先祖様の霊も加わっている――そう信じている人は多い。

幼い頃、確か八月十五日に世田谷区内にある菩提寺で行われたお盆法要のとき、住職さんから、「きっとおじいさんの霊もこの場に帰っていらっしゃるよ」と聞かされた記憶がおぼろげながら残っている。

しかしよもや、そんな異界ファンタジーの類いのような話に、私が巻き込まれてしまうことになろうとは……。
 

※本記事は、2020年11月刊行の書籍『 守護霊塾』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。