誰もがショーのことを見ていないという。

商店街では閉店の準備をしている所が大半である。私は閉まりかけのお店の主人や奥さんにショーのことを見かけなかったかと聞いて回ったが、誰もがショーのことを見ていないという。

それから、私はショーとの思い出のある公園を二、三カ所回ったがいずれも徒労に終わった。探し回っている途中、十五分おき位に家に電話を入れていたが相変わらず誰も出ない。

私は自転車を漕ぎながら「ショー、ショー、何処へいったんだよー」と、破れかぶれになって叫んでいた。もちろん、通りすがりのおばさんはビックリした顔で私の方を見ている。そんなことは知ったことじゃない。

「ショー、ショー、ショー! 何処にいってしまったんだよー」

すっかり自転車を漕ぎ疲れてしまった。尻はヒリヒリしているし、足の疲労も相当たまっている。かれこれ三時間以上漕いでいるので無理もない。

一旦、自宅に、戻ることにした。

家の中は暗闇と静寂だけが支配している。

妻はまだショーを捜しているのだろうか。

家に帰っても苛々しながら電話を待っていることしかできない。

テレビを点ける。いつもだったらお笑い番組を見て、へらへら笑っているのだが今日はそんな気分でない。脳天気な笑いが今の私の気分を逆なでする。どこのチャンネルを回しても落ち着いて見ていられない。いきなりテレビを消した。再び家は静寂に包まれた。もう九時になろうとしている。ますます嫌な想像ばかりしてしまう。ふと、ショーが生まれた時からの思い出が甦ってしまう。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『ショー失踪す!』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。