我々人間界には絶えることのない争いが存在しています。争いが生じる主な根源には、1.人種・民族の差別、2.宗教の存在、そして3.主権国家の存在、の三大根源があります。これらがなぜ争いを創造するのか、そしてどうすれば人間界から争いを追放することができるのかについて思いをめぐらします。

科学の厄災化

1.科学の非平和的使用

科学の非平和的使用の最たるものには、人間殺戮器である(1)核兵器と(2)通常兵器があります。

(1)核兵器

⑤ 核兵器削減と廃絶への取り組み

日本が「核兵器廃絶決議案」を提出しながら、ICANの「核兵器禁止条約」に核保有国と共に反対したのは自己矛盾以外の何物でもありませんが、このことはさて置きます。2016年と2017年の「核兵器廃絶決議案」の採択状況は下記のようになっています。(日本外務省報道発表)

[図表]核兵器廃絶決議案

反対国は僅か4カ国で、ロシア、中国、シリア、北朝鮮です。賛成国の中にはアメリカ、イギリス、フランスの3カ国は含まれていますから、反対国の中のロシアと中国が賛成国に回りますと、国連常任理事国であり、「核拡散防止条約(NPT)」において「核兵器保有国」として国際間で認められている5カ国すべてが賛成したことになります。

そうなりますと、残った反対国も棄権国も、関連する諸般の事情が解消することも期待され、「核兵器廃絶決議案」は満場一致で採択される期待が持てることになります。全人類の現在と未来の栄光のために、ロシアと中国には賛成国に回る大英断が切に望まれます。

*2009年、アメリカのバラク・オバマ大統領は「核兵器のない世界(核なき世界)」を演説し、ノーベル平和賞を受賞しています。しかし、他国が核を保有する限り、アメリカは核兵器を保有し続けることを言明しています。ロシア、中国も核廃棄を否定しています。

アメリカとロシア(ソ連)

*1969年から戦略兵器制限交渉(SALT)が開始され、1972年には弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)が締結されたが、2002年にはミサイル防衛を推進するアメリカにより当条約は破棄された。

*1982年からアメリカとソ連両国間の戦略核戦力削減のための戦略兵器削減条約(START)が開始され、1991年に第一次戦略兵器削減条約(START I─戦略核弾頭数保有の上限を米ロ各6000発に制限)が締結され2001年に履行された。しかし、1993年に締結された第二次戦略兵器削減条約(START II─上限は米ロ各3000~3500発)は、上述のように2002年にミサイル防衛を推進するアメリカにより弾道弾迎撃ミサイル制限条約が破棄されたため、ロシアはSTART IIを実行しないことを表明した。なお、予定されていた第三次戦略兵器削減条約(START III─上限は米ロ各2000~2500発を予定していた)は未締結に終わっている。