猫座敷の裁判

火柱が上がったのを見た気がする。それから、意識が遮断されて気が付くと長細い廊下に立っていた。

気が付くと真横にドアがぼうっと浮かんでいるのに気付いた。よく見ると「受付、ノックしてください」と書いてあったのでその通りにしてみた。

「おはいりください」と返事があった。低いが舌足らずな女の声だとわかったので、自分は少し狼狽したと同時に少し安心してドアを開けた。

周りがぼんやりと明るくなり「どうぞ」という声がした。殺風景で大きな机があり、そこに小さな女が座っている。奇妙なほどよそよそしく、だがじっと目を離さず自分を見ている。

近づくにつれてはっきり見えてきた。真っ黒い肩までの髪は、なでつけられたようにてらてらして黒いふちの大きい眼鏡をかけて、その下から細く鋭い目が自分をじっと見ている。

急に不安に襲われた。不安とともになんだか不愉快な気分になったのは、その目のせいでなくその顔が左右非対称に歪んで、それがひどく不安定な印象をかもしだしているからだ。近づくにつれ眼鏡も斜めになっているのがはっきりとわかった。