村上から電話を受けて、一も二もなく風間は承知した。三時ごろからと言うので少し早めに出かけてみると、村上は仕事が長引いて留守で、悦子が必死に料理と格闘している真っ最中だった。

「まあ、風間さん、困ったわ。まだ当分始まりそうにないのよ」
「後どのぐらいなんですか」
「うーん、たぶん二時間ぐらい……」

聞いた風間は呆れてしまった。どうやら村上家はこういう一族らしい。時間に関しては泥縄なのだ。風間が困っていると、そこに小学校四年生の有梨も出てきて退屈だと言う。

「それじゃ、有梨ちゃんを連れて、デパートにでも行ってきましょうか。二時間したら戻ってきますから」

そういうと、

「すみませんね、そうしてくださる。有梨、風間おじさんとデパートに行く?」
「うん、いく」

有梨は二つ返事で承知した。風間は子供には好かれるたちだ。有梨は風間に一度演劇の手ほどきを受けてから、おじさんおじさんといって風間になついている。

風間は、新宿の小田急デパートか京王デパートに行こうと思った。ところが、電車の中である事件があって、結局デパートにはいかずじまいになった。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『百年後の武蔵野』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。