「タクさん、私に暗黒の王は倒せないと思っているでしょ?」
「どうかな? ミコトだったらまた、俺の後ろに隠れるだろ? それも作戦?」
「そう、作戦です。タクさんの後ろに隠れているふりをして、後ろからタクさんをザクッと……。伝説の剣もいりませんね。」
「オイ、俺を刺すのかよ。倒す相手が違うだろ。」

たわいない話だが、二人の会話は途切れなかった。

肉の焼ける匂いが辺りに漂い始めた頃、タクの背後にゆっくりと大きな黒い影が近づいて来た。どうやら、近くにいたモンスターを引き寄せてしまったらしい。

それは、タクの体の二倍はありそうな巨大なモンスターだった。食事と話に夢中になっていた二人は、全く気付いていなかった。タクが背中に殺気を感じ、振り返ると同時に、モンスターは鋭い爪を振り下ろした。

「うっ!」

タクの右肩から、ゆっくりと赤い血が流れ出した。これでは剣が使えない。

しかしモンスターはすぐに、次の攻撃に入ろうとしていた。タクは傷口を押さえながら立ち上がると、ミコトに向かって叫んだ!

「ミコト、早く洞窟の中に逃げるんだ!」