一つは、村上龍氏のデビュー作である『限りなく透明に近いブルー』の舞台が福生であること。もう一つは、ストリートスライダーズが福生出身であることだ。

福生へ行けば何か自分にとって大切なヒントがみつかるかもしれない、そう思ったのだ。しかし、辿り着いた福生にはヒントを感じさせるものが特になかった。いや、直感的に何か違うような気がしたので、何も探さなかったのだ。

少し寂れていたが、沖縄を想像させるような基地のある街。私は決して嫌いではなかったが、私が探しているものというのはそういうものではない。私が探していたものは居場所である。

行く先に迷った私は、仕方がないので福生から一番近い繁華街のある八王子へ。そして半年後、執筆活動に専念するために国分寺へ引っ越した。

国分寺は心地良い。庶民的で田舎臭い、どこか昭和の香りのする住みやすい街だった。夜、オリオン座を見ながら坂を下る。

手はかじかんだままパソコンに向かう。夜空は見えない小さな部屋で、私はこれからのことをじっくり考えて行かなければならない。

台所を飾り、綺麗なベットカバーがあれば、私は部屋から出ないかもしれない。電気毛布を買ってしまえば、布団から出ないかもしれない。

図書館を見つけたり、馴染みの喫茶店ができれば、国分寺を出ないかもしれない。道を覚え土地勘が付けば尚更国分寺を出ないかもしれない。

※本記事は、2020年12月刊行の書籍『破壊から再生へ』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。