MIBG心筋シンチグラフィー(MIBGの心筋への取込を調べる)は心臓(に分布する)交感神経の状態をみる検査ですが、特に自律神経障害を有するパーキンソン病でMIBGの集積が低下し、パーキンソン病の診断の参考にすることができます。パーキンソン病専用のアイソトープを使用する検査(ダットスキャン®:DaT-scan)も有用です。

これらの検査については既に述べました。薬剤投与にあたっては、運動合併症を念頭に、発症年齢、認知症の有無などを考慮する必要があります。ドパミンの減少がこの病気の原因であることは判明していますが、ドパミンを投与しても脳の中へは入っていきません。そこで、治療としては、その前駆物質であるL-dopa(エルドパ)が特効薬として投与されるようになりました。ところが、L-dopaを長期間服用していると、5年程度で約半数の患者さんに運動合併症と呼ばれる問題が起きてきます。

症状が1日の中で変動したり(wearing off:ウエアリング・オフ現象:薬剤の効果時間の短縮)、突然症状が良くなったり悪くなったりする(on and off:オン・オフ現象:予期せぬ好転・悪化)といった薬効による変動が出てきます。そのため、L-dopaの効く時間を長くするような薬剤(エンタカポン、セレギリン)を併用することもあります。

L-dopaを過剰に服用したり、L-dopa治療が5年を越えると、不随意運動(ジスキネジア)、幻覚、認知症が生じることがあります。そこで、L-dopaよりも作用時間が長く、薬効の変動が起きにくいといわれているドパミン受容体刺激薬(ドパミンアゴニスト)で治療を開始するようになっています。この薬は、脳の中のドパミンを受け取る場所にドパミンの代わりに付着し、同時にドパミンの働きを補います。高齢者(70~75歳以上)や認知症のある患者さんや、運動機能の十分な改善を早急にはかる必要がある患者さんの場合には、L-dopaから開始します。抗コリン薬は振戦に効果があることがあります。

しかし、高齢者が服用するともの忘れや幻覚、妄想を引き起こすことがあり注意が必要です。ドパミン系に直接作用しないイストラデフィリンのような新たな薬剤も使えるようになっており、ジスキネジアを起こしにくいものとして注目されています。もともと抗てんかん薬として使用されていたゾニサミドは、ドパミンの合成を促進させる作用があり、パーキンソン病の治療にも使われるようになっています。

最近では、パーキンソン病の運動症状やジスキネジアなどに有効で、薬剤の副作用を軽減したり、投薬量を減らしたり、投薬開始時期を遅らせたりするために、脳深部に電極を埋め込んで刺激する治療(脳深部刺激療法Deep Brain Stimulation:DBS)も確立しています。ただし、認知機能が却って低下することもあり、患者さんの選択、刺激部位の選択など慎重に検討する必要があります。パーキンソン病の症状は認知症と紛らわしい場合もありますが、4大主要症状が出ていれば、強く疑われます。

パーキンソン病では、脳幹にレビー小体という特殊な物質(神経細胞内異常蛋白蓄積)ができるため、パーキンソン病ではレビー小体型認知症と似たような症状が特徴的にみられます。なお、レビー小体型認知症では、脳幹から大脳皮質全体まで拡がることがパーキンソン病との違いです。なるべく早いうちに、専門医療機関での精密検査・診察を受けることをお勧めします。

※本記事は、2018年5月刊行の書籍『改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。