『奇跡の軌跡』

「また悔やんでる」と、反省ばっかりすんなよ!の思いを込めて、怒った顔文字を付けてしまった。

すると、(あちゃー 叱られた)と、しょげたさぎりから、

さぎり…「おこらない」と、返事が来る。

私…「怒ってないよ 絵文字がキツイだけ」と、こっちも言い訳気味に返す。

さぎり…「あせってるから」と、ひらがなだらけの通信に、冷や汗をかいた顔文字が痛々しい。

「二五分には つかない」の文字に続き、泣き顔が三つも並んでいる。

(これは、どうも大幅な遅刻、決定的だな)と、こちらも些(いささ)か諦(あきら)め気分となる。

私の乗るラインは予定通りに運行しており、一時二三分には間違いなく新橋に着きそうだった。

(あと四分もすれば新橋か)と、時計に目をやる。

折角のリサイタル・デートだ。簡単に諦(あきら)めるわけにはいかない。独りきりで聴くつもりは微塵もなかった。とはいえ、新橋駅に先に着いたところで一体なにができるだろう。