結果、皆の発案で会費を積み立ててマリーナ費用を賄いかつ、将来の大型クルーザー購入の資金にしようという事になった。これが海の仲間シーガル発端の契機である。

キャビンクルーザーを得て益々海の虜になった我々はⅢ号からⅣ号に至るまで操船技術と海の男としてのマナーを磨き艇でしか近づけない東伊豆の岩場、磯、美しい浜そして秘境をくまなく発見して我々だけの海を独占し楽しみ続けた。そのようにして下田沖を経て石廊崎を超えた回数は四十五回を越えた。

実は、この数字は機関故障のため石廊崎沖と神子元島の間で漂流し漁船に曳航され下田に入った際、来艇した第三管区下田海上保安部の役人の言葉の中に出た数字から予想できた。調査官が言うには毎年、夏の週末に妻木崎から石廊崎を頻繁に往復する小型船舶が話題になっており、その回数もしっかり記録されていたとの事であった。

漁船には沿岸の漁区があって岬を越えて他の漁区に入る事はない。また、我々自身も長年この海域を航海してきたがヨット以外のクルーザーと遭遇した事はほとんどない。という事はその船舶こそシーガルであったのだ。

※本記事は、2020年11月刊行の書籍『海の道・海流』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。