「接し方がわからない」「予想外の反応に戸惑う」大人の発達障害に悩むのは本人だけじゃない。長年、医療福祉相談員として働いてきた著者が語る、ともに向き合い、仕事をしていくうえで必要なこと。本記事では、クリニックに訪れた人の声を紹介していきます。

発達障害の傾向に気づかない

発達障害の傾向があるが、本人には自覚がない場合があります。

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○医療機関の室長。ひとつのことを部下に命じて、席に戻ったかと思えばまたすぐに来て、別なことを命じる。行ったかと思えば、「あのことはどうなっているのか?」とまた来る。次の日も次の日も、思い出したことをわざわざ自分の席から部下のところまでやって来て、頭の上から大声で問いただす。

〔もちろんこの人は自覚もありませんし、精神科も受診しません。長年こうやって仕事をしてきたのです。しかしその落ち着きのなさや気になった点はすぐ言わないと我慢できないところは、ADHDの傾向があると思われます。ついにその部下はがんを発症してしまいました〕

発達障害の傾向がある人と職場の反応を素描してきました。発達障害の傾向に気づいていく場合も気づかない場合もあります。ただ、共通しているのは、発達障害の傾向がある人たちは起きている事柄に対し悪気はなく、ほかに与えている影響について自覚が乏しいということです。