みんなこの夏休みを利用して、海外旅行や家族サービスなど、普段疎かになっているプライベートに力を注ぐ。僕も担当患者さんを上の先生方に任せて夏休みに入った。

しかし、仕事のことで手一杯で夏休みの計画を事前に立てることができなかった。この1週間のスケジュールは全くの白紙だ。

4月に上京した当初は、都会生活やこれからの自分の未来に明るい希望を持っていた。現実は、家と病院の往復だけで都会生活を楽しめているとは言えないし、手術もそう簡単には上達しない。

その中でも患者さんを受け持たせてもらったり、初執刀を経験したり、確実に一歩ずつ外科医の階段を登ってきた。我ながら充実した日々を送ってきたと思う。飲まず食わず、さらには寝ずの日もあったが、充実していたからこそ、乗り越えられた。

しかし、例の一件で状況が一変した。手術に集中できなくなり、上の先生の顔色を伺うようになった。その状況にも時間が経つにつれて慣れてはきたが、克服はできておらず、騙し騙しここまでやってきた。

精神的に辛くなり、夜も眠れず朝も起きづらくなっていた。精神的に苦しくなると、今まで気にならなかった疲労も強く感じるようになった。もうほとんど限界だった。予定はなくともこのタイミングで夏休みに入ることができたのは本当に救いだった。

※本記事は、2020年7月刊行の書籍『孤独な子ドクター』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。