この論文「福島原子力発電所事故後20~30カ月の期間に検査を行った小児・思春期福島県民における甲状腺の状態・横断的研究」(掲載誌PLOS ONE2014)は世界から注目を集め私自身も強い関心を寄せていた。

渡部医師は見解を次のように要約した。今回の研究では、甲状腺超音波検査、甲状腺関連血液検査、尿中ヨウ素濃度、放射性ヨウ素(131-I)土壌汚染濃度の4者間に統計学的に有意な関係を認めなかった。しかしこれはあくまで事故後20~30カ月時点での結果であり、放射能による有意な影響については今後も長期に亘って継続し詳細に検討してからでないと結論は出せない。

研究結果の中で、居住地(2011年3月15日から31日)131-Iの土壌濃度が、総結節3個群並びに嚢胞3個群で、それぞれ無い(0個)群に比し、1.2倍と統計学的に有意に高かったことが気にかかっている。チェルノブイリでは原発事故から4~5年後に小児甲状腺がんが多発したとされているが、当時の超音波診断装置の性能が今よりかなり低かった等の理由から潜伏期間は実際にはもっと短かった可能性がある。

広島・長崎の原爆被ばく者を対象とした研究論文では、被ばく後50年以上を経過しても甲状腺異常の発現頻度が高いままであると報告されている、等である。

別れ際に渡部医師は、今後も継続して研究を続け得られた事実を世界に発信していくことが同時代に生きる我々内分泌専門医に課せられた責務であると語った。結論を得るにはまだまだ長い時間を要するようだ。