でも、会社に着いてみると、カバンの中に入っているはずの書類がない……。おとんは、あわててパソコンから情報を取り出そうとしたが、あせっていてパソコンがうまく立ちあがらず万事休す。

「キミはいったい会社を何だと思ってるんだ」
「あのう、昨日書類を持ち帰って、家で最後の仕上げをしてお見せする予定にしてたのですが……」

おとんは、昨日もお酒を飲んでいて、帰ってくるとすぐに寝た。

「客は注文を断ってきたぞ。キミは営業に向いとらん。明日から倉庫管理だ」
「そうですか……じゃあ会社やめさせてもらいます」

おとんは、さばさばと言ったらしい。これから先のことも考えないで。ぼくは書類がなくなった原因を、タンスの上から目撃していた。

 

ゲンキがカバンの中身をケージの中に入れたのだ。カバンの中には、チキンのからあげが入っていた。おまけに、においのついた書類まで引っ張り出した。あとでおとんが、ケージの中に骨と書類が入っていたので、前の晩のことを思い出した。

居酒屋で飲んだ時に、ゲンキにチキンをやろうとパックごとカバンに入れていた。おとんは、居間にそのカバンを置きっぱなしにして、そのまま寝てしまったのだ。すべては、あとの祭り。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『愛ラブ猫 I Love Neko』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。