幹部候補生合格者が発表された

第一期の検閲も終了した四月一日、初年兵は全員肩章が一つ星の二等兵から二つ星の一等兵に昇進した。同時に神尾班長から幹部候補生合格者が発表された。

連隊全体の志願者約五百名のうち、合格者は百名だった。班の中では、石山、沢村と杉井の三名のみが合格となった。宮谷、山口、大道など合格できなかった者は、四月末から中国中部の戦線へ出征することになり、杉井ら合格者は更に六ヶ月間、連隊で訓練を続けることとなった。

杉井は、自分の合格を信じて疑うことはなかったが、いざ結果が発表されてみると、これは予想以上に大きな運命の分かれ目であったと思った。不合格となった者たちの受け止め方は様々だった。寝台が斜め向かいの大道は、もとから幹部候補生になりたいとの意欲も全くなく、結果が発表されたあともサバサバしたものだった。

夕食が終わって部屋に戻ると、大道は笑顔で杉井のところへやってきた。

「杉井、おめでとう。偉くなれよ」
「大道は残念だったな」
「俺は、もともと自分が合格することなど考えたこともない。言われたとおりに訓練には真面目に取り組んできたが、周りを見て、自分より皆が優秀だってことは自分が一番よく分かる。立派な者たちが幹部になって組織を動かし、俺みたいなのが下からそれを支える。それで全体がうまくいくようになっているんだと思う。それにここでの生活が特に気に入っている訳でもないし」