「タクシーでも、帰った方がいいんじゃない?」
「帰れないよ」
「ん…」

御返事もできないほど。確か眠たがっている。

「タクシー呼んでこよっか」
「タクシー呼んでくる」

その子たちは、どたばたと、向こうへ歩いて行った。とてもじゃないけど、立てないんじゃと思う。ぐったりしていた。数分経って、タクシーと共に、その子達が、帰って来た。

「とにかく、ひとりは乗ってください」
「はい、行きます」
「いいの? ごめんね」
「いいよ」

家まで届けることになった。その子は、タクシーの中で、やたらに怖いと言った。

「何、みんな、怖いわ」
「だいじょうだよ」
「何」
「家、泊まれる?」
「実家だから」

家に着いた時、支えて家まで連れていくのかと思ったけれど、タクシーでこのまま帰りなさいと言われた。

「家まで行くよ?」

タクシーの前で、支えのどさくさによくありがちな、抱き合う形みたいになったので、そのまま抱き支えていた。

「駅まで、払ってあげるから、このまま、駅まで帰り」

その子は、千円をタクシーの運転手に渡し、わたくしは、タクシーに乗り込んだ。駅まで、数分もかからないぐらいのところだった。こういう風に、知り合った人を届けるのも、初めてだなぁ、と感慨に耽っていた。

と、その時、道の花壇に座って、寝ている様な人がいる。

「とめてください、……、ここでいいです」
「はい」

※本記事は、2020年11月刊行の書籍『pop lock』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。