大丈夫。いつか春がやってくるから
第一志望の大学で充実した日々を送る沢波俊樹。
サークルで出会った、一見クールでひときわ美人な春田恵美と、高校時代からの友人で気心の知れた木下和との間で揺れ動く心。
そんな彼に、恐ろしい病魔が迫っていた――。
青春のときめき、切なさ、葛藤、温かさを爽やかに描いた、感動の純愛小説を連載でお届けします。
春の出会い
邪気:90 代謝:80 正気:80
授業が始まって二週間。一、二回生の間のメインは『教養』ということでさまざまな分野の授業を受けることになっていた。一応希望する科目を選択できるけど、ほぼ学部学科ごとに固まってしまっている。なので毎日顔を合わせるのは同じメンツ。よほど高校の選択授業の方がシャッフルされていた。
もちろん選択できる授業の数は高校の比ではなく多い。もっとみんな好奇の目を広げてみてはと思ってはみたが、当の本人がベタベタの農学部資源生物科カリキュラムなので大きなことは言えない。
(いやいやほら最初はみんなと同じ方が、コミュニケーションをとるのにもいいやろう)とあまりはみ出したくない自分を納得させる。
どの集団でも、同じメンバーである程度過ごすといくつかの小さな集団ができるものだ。高校時代、僕は大きなグループに属さず、少し離れた小さいグループに属しているような存在だった。ともすると一人だったこともあったかもしれない。それはおそらく、自分から話しかけることや、人に干渉されることを、面倒くさいと思っていたからだ。
★邪気指数、新陳代謝指数、正気指数
漢方の立場で見た、主人公沢波俊樹の体調を示します。本来、漢方にはこんな指数はありませんが、これに近いことをもっと細かく考えながら対処します。これらの変化は人によって異なります。
●邪気指数
体の中に溜まった不要なもの(邪気)の量を示す指数です。邪気は誰の体の中にもあります。食事の質や偏り、嗜好品、食べる時間などで変化しやすく、新陳代謝指数が下がり排出が悪くなることでも上昇します。邪気がかゆみの元にもなることがあります。ここでは50~150を正常範囲とします。150を超えると体調を崩しやすくなります。ただし、正気指数が高い方は、邪気指数が高くなっても体調を維持することができます。
●新陳代謝指数
体の中の、良い物(正気)、悪い物(邪気)がどれだけスムーズに動いているかを示す指数です。通常人が生きていく中で、良い物(新)を取り入れて、いらないもの(陳)を排出しています。それがスムーズに動いていること(代謝)が大切です。飲食の消化吸収、大小便での排出、血流、発汗などトータルの指数とします。運動不足やストレスなどで低下します。ここでは70~100を正常範囲とします。新陳代謝指数が下がると邪気指数が上がりやすくなり、下がっているときには正気指数も下がっていることが多くなります。
●正気指
数
体の元気(エネルギー≒正気)の指数です。バランスの良い飲食で満たされ、ほど良い休息をとることで作られます。逆にストレスや過労で低下します。正気が少なくなると、体のだるさや意欲の低下がみられ、免疫をコントロールする力が弱り、かゆみを抑えられなくなり、症状が悪化します。ここでは70~100を正常範囲とします。正気指数が高いと新陳代謝指数は上がりやすく、邪気指数が少々高くても生活に支障はありません。