四病協合意・日病協合意の内容

日病協合意では、「医療従事者個人の責任追及の結果をもたらすものであってはならない」とした。この条文も種々の議論の結果、筆者の主張が取り入れられたものであるが、このような記述にした意図は、「責任追及を『目的』とはしなかったが、『結果的に責任追及』になってしまった」というようなことがあってはならないことを明確に示したものである。

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行政的には、責任追及が目的ではなかったが、結果として、責任を追及されるということになってしまったということは、よくあることである。注意しておく必要があろう。

同時にWHOドラフトガイドラインを明示して、「院内事故調査委員会が収集・作成した資料及び報告書は、当事者に不利となる使われ方をすべきではない」とした。間接的表現となってしまったが、これらは、再発防止に資するためには、責任追及を排除する必要があることを記載したものである。また、院内に専門家等の適切な人材が不足している場合には、院外に応援を求めることができるように記載してある。これはあくまでも、院外からの「支援」であるため、院内事故調査委員会の「委員」としての参加ではなく、「オブザーバー」・「アドバイザー」や「顧問」での参加が好ましい。

院外事故調査委員会は地方に設置する第三者機関であるが、日本医療法人協会原案で述べたように、複数設置を想定している。院外事故調査委員会への依頼が病院裁量であるとともに、どの院外医療事故調査委員会に依頼するかも病院裁量である。また、院外事故調査委員会は、あくまでも、院内事故調査報告書の検証機関であり、院内に直接立ち入っての調査は想定していない。また、遺族への説明は、病院に一本化されており、「調査報告書に基づき」説明を行うこととしている。報告書を「交付」するか否かも病院裁量ということである。

中央の第三者機関は、事例収集・再発防止のための機関であり、調査権限を有するものではない。これまでに、これら事業を行ってきた日本医療機能評価機構や中央の各病院団体本部等を想定した。新しい組織を作る必要性を否定したものである。

この合意の基本的な考え方は、「院内事故調査委員会中心主義」、言い換えれば、「当事者解決主義」であり、地方の第三者機関である院外事故調査委員会は、それを支援・バックアップする機関であるということを明示している。また、中央の第三者機関は、再発防止のための研究機関であり、事例収集や対策の研究等がその業務である。権威的組織であってはならないとともに、行政との関係があってはならないことは当然であろう。全体システムは、ボトムアップ型の解決システムと言える。今回出来上がった医療事故調査制度の基本フレームが日本医療法人協会案・病院団体合意であることは明白である。大綱案とは基本構造が全く異なるのである。

その後、四病協合意、日病協合意、全国医学部長病院長会議案につづき、日医が病院団体と骨格を同じくする答申をまとめたことから、医療界の考えが、概ね統一されたと考えられた。われわれ、医療者の共通認識は、「WHOドラフトガイドライン」遵守ということで一致したのである。その後のおかしな動きについてはあらためて記述したい。

※本記事は、2018年12月刊行の書籍『未来の医師を救う医療事故調査制度とは何か』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。