最後にまだ解決していない悩みがある。悟りを開いた人はそれをみんなに伝える義務があるかということである。何かを訴えるときは必ず何かを否定している。悟りを開いた人は、否定しない主義なので、否定しないように努力するのだが、正反対の二つの思想の中間に行かないと否定はなくならない。しかし前にも言ったが、中間には行けない。だから、いつまでたっても否定は少なくなるが、なくならないのだ。全く否定しない者とは、人間以外の生き物のように、全く思想を持っていない者だけだろう。つまり、人の生き方は、押し付けるものではなく、勧めるものだ。そうやって考え方が進むにつれ、謙虚になっていくと、人生の生き方は、勧めることもダメなのではないかと思ってしまうのである。いっそ、人との接触を一切絶ち、仙人などと名乗るのはやめて、一人でひっそり暮らすのが最善なのではないかとも思ってしまうのである。それが今の悩みだ。これも、人を傷つけるのが嫌で、人に生き方を語らないという利己主義だが、限りなく利他主義に近いということか…。