「“ゲンキ、ダメっ!”て怒っても、もうその時には何か口にくわえてもぐもぐ。もう間にあわないんだから」と、おかんが悔やむ。犬好きの友達がやってくると、その舌で顔や口を、ていねいになめている。

おとんはサラリーマン。夜おそく帰ってくると、お酒のにおいがぷんぷん。ゲンキに息をしっかり吐いては、時々わけのわからないことをしゃべる。それでもゲンキは、うれしそうにしっぽをふって、おとんの顔じゅうをなめる。

ぼく? お酒のにおいなんて、身ぶるいするほどきらい。だから、いつもおとんが帰るとタンスの上からようすを見ている。

おかんは専業主婦。毎朝、新聞の広告をすみからすみまで見て、夕方買い物に出かける。

毎日食卓に2割引き、3割引きのラベルがついたパックの惣菜が並ぶ。おかんのえらいところは、ゲンキとぼくには添加物ゼロの、最高級のペットフードをネットで取り寄せることだ。

「私たちが食べる物はスーパーの安売りでじゅうぶん。でも、この子たちには、おいしくて健康にいい物だけを食べさせたい」が口ぐせ。でも、おかんはしょっちゅう友達と一緒に、おいしい物を食べにいく。

おとんがいない昼間は、サークル活動にいっしょうけんめいだ。フラダンス、合唱サークル、料理教室。仲間たちとのおやつタイムとグルメで、ずっとゾウアザラシの体形をキープ。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『愛ラブ猫 I Love Neko』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。