そしてミコトに自分の戦い方を見せようと、颯爽とモンスターの群れの中へと一人で入って行った。自分からは何も言わなかったが、タクは伝説の戦士と呼ばれるほど、剣の腕が立つ。あっと言う間に数匹のモンスターを軽々倒し、ミコトのところへ戻って来た。

だがその時、ミコトは地面にしゃがみ込み、足元にじゃれついてきた一匹のスライムと楽しそうに遊んでいた。タクはその様子を見てガックリと肩を落とした。自分の戦う姿を見て、ミコトに戦い方を知って欲しかったからだ。

(今の戦いは無駄だったか……。まぁ、最初に説明してなかった俺も悪かったしな。)

タクはミコトに気付かれないように、小さなため息をついた。ミコトは、そんなタクの様子を察し、さすがに悪いと思ったのだろう。すぐさまスライムに別れを告げると立ち上がった。

「只今のタクさんの戦闘値。攻撃力540、素早さ369、得意技……。」

あろうことか、ミコトはスライムと遊びながら、タクの戦い方、能力、その他もろもろを細かくしっかりと記憶していたのだ!

「ミコト……、いつの間に?」

(これが真の勇者、ミコトの本領なのか?)

※本記事は、2020年11月刊行の書籍『Slime Slime Slime ~戦地に降りた天使~』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。