人形の目が頭から離れない

それからしばらくの間、明け方に決まって彼の夢を見た。彼はあのときのように何かを語りかけてくるのだが、よく分からない。そして覚めたばかりなのに、その夢がどんな夢なのかも思い出せない。

ただあの人形が、彼のことだけが、頭の中に残っているのだ。学校では、いつにも増して一日ぼんやりと過ごすことが多くなった。授業中、呆けて窓の外を眺め、彼のことだけを思っていた。彼の不思議な呪縛に、ゆっくりと柔らかに、取り憑かれているようだった。土曜の放課後、ぼくは、見えないものに引き寄せられる感覚とでもいうのだろうか、いつの間にか、この骨董屋の前にいた。戸口のガラスを開けて、中に入る。

そこは外界とは隔絶され、暗闇の冷気に包まれていた。ガラス戸の向こうは、あんなにも夏の日差しが眩しいのに、ここだけが暗い。あれほど騒がしかった蟬の鳴き声も一瞬に遮断された。汚らしい狭い路地から一歩入り込んだだけなのに、この異界に迷い込んだような感覚は何だろう。静かに古物たちは、場違いの人間がここに来たことを拒絶でもしているかのようだった。ぼくは背筋に寒気を感じ、身震いした。小さな店である。

すぐにも彼を見つけられるはずだった。しかしあの白い肌の人形たちの棚すら見つけられない。ぼくは何度も棚の間を行き来した。店の隅々まで探しているつもりなのに、いつの間にか入口のカメラの棚の前に戻っている。何度奥に入っていこうとしても、跳ね返されるように入口に出ていた。