大丈夫。いつか春がやってくるから
第一志望の大学で充実した日々を送る沢波俊樹。
サークルで出会った、一見クールでひときわ美人な春田恵美と、高校時代からの友人で気心の知れた木下和との間で揺れ動く心。
そんな彼に、恐ろしい病魔が迫っていた――。
青春のときめき、切なさ、葛藤、温かさを爽やかに描いた、感動の純愛小説を連載でお届けします。
風が優しく撫でて柔らかな陽射しが降り注ぐという表現がぴったりな二時少し前、勢いよく追い越していく車の障害物と化してのろのろと車道の脇をクロスバイクで走る。普段授業を受けているエリアから五百メートルほど離れた別のエリア、大通りから門をくぐってすぐの指定された場所には、人工芝の間に砂が混じったようなコートが三面あった。そのうち二面ではテニスウェアに身を包んだ人たちがすでに打ち合っていた。
僕は掲示板に貼ってあった通り、何も持たずに(といっても何も持ってないのだが)、普段履きのランニングシューズ、ジーンズに綿シャツ+スタジャンと朝着て来たままの格好で受付に向かった。
受付で先輩と思しき人に怪訝な顔をされたので不思議に思ったが、その理由はコートに集まっている体験希望者を見るとすぐにわかった。みんなスウェットなんかをきっちり着て来ているのだ。大半がラケットも持参している。人とまったく同じことをするのは嫌だけど、違いすぎるのもどうかと思うので、すでに居心地が悪かった。
このテニスサークルはどの学部の生徒も入ることができる。だから総勢十数人いる体験希望者は見たことのない人ばかりだ。男女比は半々くらいだろうか。友達と一緒に来た人が多いのか、すでにいくつかのグループに分かれて待機していた。
軽く体操して体をほぐしてから、まずボールを打ってみましょうとのことで、『球出し』をしますと言われた。一面のコートを使い、ネットの付近から先輩がボールをハエが止まるほどゆっくりと打ってくれて、それを反対側のコートに打ち返すというものだ。
ラーメン屋にできる行列のごとくやや曲がりながらも縦に並び、初めだけ学部と名前を言ってから打ち返す。一球交代で列の後ろに並び直すのだ。
★邪気指数、新陳代謝指数、正気指数
漢方の立場で見た、主人公沢波俊樹の体調を示します。本来、漢方にはこんな指数はありませんが、これに近いことをもっと細かく考えながら対処します。これらの変化は人によって異なります。
●邪気指数
体の中に溜まった不要なもの(邪気)の量を示す指数です。邪気は誰の体の中にもあります。食事の質や偏り、嗜好品、食べる時間などで変化しやすく、新陳代謝指数が下がり排出が悪くなることでも上昇します。邪気がかゆみの元にもなることがあります。ここでは50~150を正常範囲とします。150を超えると体調を崩しやすくなります。ただし、正気指数が高い方は、邪気指数が高くなっても体調を維持することができます。
●新陳代謝指数
体の中の、良い物(正気)、悪い物(邪気)がどれだけスムーズに動いているかを示す指数です。通常人が生きていく中で、良い物(新)を取り入れて、いらないもの(陳)を排出しています。それがスムーズに動いていること(代謝)が大切です。飲食の消化吸収、大小便での排出、血流、発汗などトータルの指数とします。運動不足やストレスなどで低下します。ここでは70~100を正常範囲とします。新陳代謝指数が下がると邪気指数が上がりやすくなり、下がっているときには正気指数も下がっていることが多くなります。
●正気指
数
体の元気(エネルギー≒正気)の指数です。バランスの良い飲食で満たされ、ほど良い休息をとることで作られます。逆にストレスや過労で低下します。正気が少なくなると、体のだるさや意欲の低下がみられ、免疫をコントロールする力が弱り、かゆみを抑えられなくなり、症状が悪化します。ここでは70~100を正常範囲とします。正気指数が高いと新陳代謝指数は上がりやすく、邪気指数が少々高くても生活に支障はありません。