八月なのにエアコンも使わず、窓を開け放して営業している。北海道ならではの光景か。塩ラーメンを注文して、壁を見るとテレビでおなじみのお笑い芸人の色紙が何枚も飾ってあった。お笑い系御用達の店? さて肝心のラーメンであるが、塩ラーメン特有の澄んだスープは、薄味だが滋味深く、美味しい。しかも、中太縮れ麺が、よくスープとからんでいる。昨日の味噌ラーメンよりは断然美味しい。僕の丼の回りで戯れる、二組のハエのカップルもここの常連なのだろう。

昼食後は、最後の訪問地の五稜郭へ。五稜郭タワーの最上階に昇る。ここから、五稜郭全体を見渡すことができる。

星形をした幾何学状の城郭にしばし見とれる。五稜郭は、日本の近世、いわゆる武士の時代を埋葬している美しい墳墓のようだ。五稜郭は、郭内を散策して見学するよりも、高所から全体を見渡す方が、断然良い。見飽きることがないからだ。五稜郭内の再建された函館奉行所を大急ぎで見学。五稜郭に別れを告げ、函館空港に向かう。

間に合うか。レンタカーを返却し、搭乗手続きを済ませねばならない。カーナビは、空港までの所要時間を三十分としている。

道路が広くて、車が少ないので助かる。途中、カーナビは港の岸壁沿いの狭い道路を指示してきた。なるほど裏道を通って、到着時間を短縮しようとする腹積もりだな。ありがとう、カーナビ。旅の良き相棒よ。

車は小さな海運会社が並ぶ、もはや路地と言っていい道を通り抜け、やっとのことで、どん詰まりの寂れた倉庫街へ到着。「ぶっ飛ばすぞ! この野郎!!」。カーナビは、「目的地に到着しました」と、しれっと言ってのけている。

※本記事は、2020年11月刊行の書籍『サラリーマン漫遊記 センチメートル・ジャーニー』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。