今は「生徒指導の案件があります」と聞くと嬉しくなります。子どもと一緒に考え、信頼関係を作る大チャンスだからです。自分の頭で考えさせ、励ましの声をかけ、必ず最後は心が前向きに明るくなって、軽い足取りで帰ることができるよう心がけています。

ただし誤解されたくないのは、今も厳しく叱ることもあるということです。例えば、自分の目の前に崖があり、子どもがその崖の方向に走っているとします。子どもは前を向いておらず、その先が崖であることに気づいていません。

そのときに、優しく小さな声で、「おーい。だめだよ。危ないよぉー」と言いますか。私だったら違います。自分ができる最大限の声で、体を張って必死に止めます。真剣に。

そして二度と、その方向には走ってはいけないと言います。子どもを崖下に落としてはならないからです。

このときの言葉は厳しいものであったとしても、「本当の意味で優しい言葉」です。反対に表面上だけの優しい言葉であったとしたら、「ほんとうの意味では優しくない言葉」でしょう。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『教師は学校をあきらめない! 子どもたちを幸せにする教育哲学』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。