鍵を開け、TENCHIのいる隣の部屋に行こうとするシマ。

「用…あ、あの、黒い鞄の件ですね、私も早く開けて中身を見たい。聞きましたよ、アメリカに勝てるかもしれない秘密兵器ですね!」

アツシはあどけない少年の瞳めを輝かせる。

「戦争に勝者はいない、あるのは敗者だけ…」

眼を赤く光らせながらゆっくりとTENCHIが呟いた。

「バカ、鞄の事は極秘事項だぞ」

シマは振り向き、アツシを叱責した。

「日本…太平洋戦争」

自身の頭脳に読み込むようにTENCHIが再び呟く。

「とにかく修理だ、TENCHI、お前分かるか」

シマはTENCHIに訊く。

TENCHIは赤い目を点滅させながら、基地内中のありったけ持って来た工具類を見て云った。

「工具確認…かなり旧式ですが設計図通りやってくれたら…もしかして…」

「こいつ、敵ではなさそうだな。使える…賭けてみるか…」

シマはTENCHIを見つめゆっくりと呟いた。

※本記事は、2020年11月刊行の書籍『浦シマかぐや花咲か URA-SHIMA KAGU-YA HANA-SAKA』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。