てんかんは興奮する脳の部位に応じて様々な症状が起こります。けいれんはてんかん発作の代表格ですが、非けいれん発作も少なくありません。例えば、意識障害、認知機能・言語機能の障害、感覚障害などの非けいれん性の症状のみが起こる場合です。このような非けいれん性てんかん発作(複雑部分発作、単純部分発作、欠神発作、口をもぐもぐさせる、衣服をまさぐる)は脳卒中(特に脳梗塞)や認知症と紛らわしく(strokemimics,dementia mimics)、鑑別は必ずしも容易ではないのです。

てんかん性健忘の特徴は、次のようなものです。

・意識がもうろうとなって奇異な動作をくりかえす(複雑部分発作という)

・一過性健忘が反復して起こること

・記憶以外の認知機能は正常であること

・脳波にてんかんを示す異常があること

・他のてんかん症状も伴うこと(唇鳴らし:lip smacking、幻嗅:olfactory hallucination)

・抗てんかん薬が有効

てんかん性健忘には、上記の一過性以外に、持続性として、

・脳波上の発作活動が遷延し、非けいれん性の臨床徴候が生じている状態

・脳波異常は認められないが、抗てんかん薬が有効といったタイプもあります。

繰り返しになりますが、高齢の認知症の人、特に認知機能が良いとき(発作間欠時)と悪いとき(発作時および発作後)の症候に波がある人を診る場合には、てんかん原性健忘の疑いを抱くことが重要です。

40代女性、もやもや病 正常安静時の脳波。異常波なし
同じ患者さん 発作後の脳波。異常波(徐波)が出現している

てんかん治療は、成人患者は脳神経外科、脳神経内科、精神科で行われていて、専門といえる科はありません。正しい診断や適切な治療が受けられる医療体制が整っていません。てんかんと事故との問題においても、事故を防止するには罰則を厳しくするよりも、患者さんの治療や支援をどうすべきかを正面から受け止めて考える必要があります。お悩みの方は、公益社団法人日本てんかん協会にアクセスされるとよいでしょう。てんかんによる身近な悩みや苦しみを共有し、解決するために設立した団体です。47都道府県すべてに支部があります。

※本記事は、2018年5月刊行の書籍『改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。