「脳梗塞・認知症・運動器症候群(ロコモ)」​三大疾患、2人の医学博士が徹底解説。高齢者が自立して健やかな老後を送るためのノウハウ満載。医療従事者だけでなく、介護・福祉関係者も活用できる知識をお届けします。

認知症と紛らわしい病気

◎てんかん性健忘とは?

本書では、てんかん(epilepsy:エピレプシー)については詳しく触れませんが、てんかんは脳血管障害、アルツハイマー型認知症などとともに頻度の高い中枢神経系疾患の1つです。高齢人口の増加とともに、高齢発症のてんかん患者数が増え、若年発症した患者さんの高齢化によっても、高齢者てんかん患者数は増加傾向が明らかです。

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WHOの調査では人口の1%を占める疾患で、国内にも100万人の患者さんがいるといわれています。また、諸外国の研究調査では、人口10万人あたり70歳代では100人以上、80歳代では150人以上が毎年新たにてんかんを発症し、特に小児および高齢者に多くみられます。

高齢者で認知症と診断されて治療を受けているてんかんの患者さんは決して稀ではありません。ある統計では5%という比率も報じられています。「高齢者診療のピットフォール-見過ごされがちな疾患“てんかん”-」なのです。

てんかん発作の臨床症状は、けいれんと非けいれんに分ける分類法や、全般てんかんと部分てんかんに分ける分類、その他があります。

てんかんは大脳の神経細胞の過剰興奮で生じますが、脳の左右がともに興奮する「全般(ぜんぱん)てんかん」と左右どちらかのある部分が興奮する「部分てんかん」に分類されます。それらのいずれであるかによって、選択薬が異なります。

てんかんといえば、けいれんを起こすものと一般的には思われています。確かに、目の前の人が突然のけいれんを起こした場合、目立つ症状ですし、誰しも対応に慌てることでしょう。応急処置には幾つかの留意事項を守って対処し、救急隊や救急外来にバトンタッチとなります。

けいれんの原因は様々で、医師はいろいろの疾患を念頭において診療します。それは、

1)てんかん(抗てんかん薬の怠薬、睡眠不足)

2)代謝異常(高血糖、低血糖、電解質異常、低酸素血症)

3)不整脈(アダムス・ストークス症候群、心房細動・心室細動、洞不全症候群)

4)薬物・アルコール離脱症候群(危険ドラッグを含む)

5)頭蓋内器質性病変(脳卒中、頭部外傷、脳腫瘍)

6)中枢神経感染症(髄膜炎、脳炎)

などです。