まず本人に会わなければと思い、住所からその人のアパートを訪ねました。ですがその夜遅くになっても帰ってきません。寒かったので、アパート前の喫茶店に入りました。その喫茶店のガラス越しにアパートが見えます。コーヒーを飲みながら帰りを待とうと思い、注文しました。

調味料入れのような陶器製の容器に入った砂糖を手に取り、コーヒーに入れました。ゆっくりかき混ぜ、コーヒーカップを口に運びました。「わっ、辛い!」その容器は塩の入った瓶だったのです。

同じ形の瓶が二つ置いてあり、砂糖と塩が入っていました。よく見ると、小さな字で「SALT」と「SUGAR」と書いてあります。

まさか喫茶店のテーブルに塩が置いてあるとは思わなかったのです。字を見ないで入れてしまった自分が悪いのかもしれませんが、店員を呼んで「なんで同じ容器に入れてあるんだ」と多少文句を言い、コーヒーを入れ替えてもらいました。

店員は一応「すみません」と言いましたが、なんだか愛想が悪いのです。窓の外を見ると待ち人が帰ってきたようだったので、レジに向かいました。伝票には二杯分の金額が表示されていました。癪に障りましたが、支払いをし、向かいのアパートに行ってブザーを押しました。出てきたのは可愛い女性です。遅く訪ねたことを詫び、名刺を渡しました。部屋に入るわけにもいかないので、玄関先で手短に用件を話すと、学校からも話を聞いていたらしく、数日後にはTOTOビルの事務所で会うことを了承してくれました。面接にはメンテナンスの担当者も立ち会ってくださり、採用が決定。彼女の勤務地はTOTOサービスの事務所になりました。

やっと一名採用することができて、辛かったコーヒーの味も、二杯分払ったコーヒー代も甘い味に変わっていました。

後日、TOTOサービスを訪問すると、彼女はもうTOTOサービスの社員の中に溶け込んで仕事をしていました。彼女は建築設計を勉強しているだけあって、即戦力になりました。

TOTOサービスの担当者からは、「大変優秀な人を採用してくれて助かっています」と言われました。

※本記事は、2017年11月刊行の書籍『霧中の岐路でチャンスをつかめ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。