「明けましておめでとう!」

玄関をあけるなり、神矢がにこやかに迎えてくれた。

「おめでとうございます。…おせちを作って来たの。お口に合うか不安なんだけど…どうぞ」と、私は風呂敷包みを神矢に渡した。

「えっ? 今年も早速サプライズだね! ありがとう。ダイニングで一緒に食べよう!」

私達はダイニングへ入った。

「お餅も持って来たんだけど…お雑煮を作らせてもらえるかしら?」

「あぁ。ありがとう。どうぞ、キッチンを使って」

「関東は、すまし汁よね?」

「そうだけど…君が作ってくれるなら、関西風がいいな!」

「じゃぁ、お味噌はあるかしら? 白味噌だけど…」

「あるよ。冷蔵庫をあけて、左の奥だ」

私は冷蔵庫から白味噌を探し出した。それから鍋を借り、持ってきた昆布でだしをとり、輪切りにしてきた大根と人参を入れ、白味噌を入れ、雑煮を炊き始めた。味噌の加減を味見して、ちょうど良かったので餅を入れた。

炊きあがって、神矢が渡してくれた二つのお椀に餅を入れ、大根と人参の紅白を綺麗に

のせて、汁を入れた。

「できたわ。どうぞ召しあがって」と、私はテーブルにお椀を運び、重箱のふたをあけた。

神矢が取り皿を出してくれ、二人でお祝いをする事になった。

「ありがとう。じゃぁ、おめでとう! 頂きます」

神矢が雑煮を吸った。私はドキドキしながら様子を見た。

「うん! 旨いよ! 関西風の雑煮は初めてだけど、本当に美味しいよ」

「良かった」

私はホッとした。神矢は重箱のおせち料理も「旨い! 旨い!」と食べてくれた。私は幸せでいっぱいになった。私達は何を話すでもなく、お互いをニコニコと見つめ合いながら、食事をした。私は、時間が止まってくれたらいいのに……と思った。その時、神矢が言った。

「君は本当に、いい奥さんになるよ」

(えっ?)私は、急に突き放されたようで、悲しくなった。貴方の奥さんになりたい、いいえ、結婚なんてしなくてもいい、ずっと貴方のそばにいたい!…そう言いたいのを、グッとこらえた。

※本記事は、2019年6月刊行の書籍『愛』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。