国語辞典で「口利き」を調べると「中に立ってとりなすこと(人)。仲介すること(人)」とある。これだけ見れば悪い意味はない。しかし、私たちが「議員の口利きがあった」というとき、それは悪い意味で用いていると思われるし、私自身も悪い意味で用いている。

ところが県にあっては、どうも悪い意味はなさそうだ。仮にあったとしても、県と県議の間では「口利き」という概念は存在しないかのように見える。私には県議の不当な圧力だとしか思えないようなことでも、県の職員は「不当」とは思っていないようだ。

役所において議員対応は本来の仕事であるから、補助金の交付申請にあたって議員が仲介してきても、特にそのことを問題視することはないようだ。しかし、私には問題があるように思われる。

というのは、グループ補助金の申請にあたって議員がまったく関係していないグループもあるからだ。むしろ、議員が出てこないグループのほうが多い。そして、すべてのグループが採択されるとは限らない。審査があるのだ。

その際に、議員の紹介のグループについての審査が甘くならない、すべて公平に扱われるという保障はあるのだろうか。私はないと思う、ないと思うが、I社への補助金の件が県議の圧力によって認められたわけではないと私は信じたい。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『補助金の倫理と論理』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。