そして、補助金交付事務だけでなく、すべての仕事についてそうなのだが、役人は法令に定められていないことはやってはいけない。「しなくていい」のではない、定められていないことをやったら罰せられるのだ。

そのことを役人は知っているから、余計なことはしないという習性が身についている。そして、県民に、あるいは国民に、「寄り添っていない」という批判をおそれるから、グループ補助金の場合なら受給者が不利になる帰結をもたらすような調査を徹底的に行うことはしないのだろう。

しかし、本当に補助金受給の資格要件等に疑義があるのなら、徹底した調査は必要なのではないだろうか。もし、いま述べたような理由で調査がおろそかにされ、補助金が支出されてしまったとしたら、それも受給者の不正と同列のモラルハザードといえるのではないだろうか。

私は、I社への交付決定を県のモラルハザードだと断定しているのではない。その可能性がある事例として挙げただけだ。

補助金については受給者のモラルハザードがよく問題にされるが、実は支給者のモラルハザードが発生する可能性もある、というよりは、常にその危険性があるといったほうがいいのかもしれない。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『補助金の倫理と論理』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。