「まあな」

平気でゴミを道端に捨てる人間が、男女問わず実に多い。ためらうことなく、さっとゴミを落とす。

「清掃する人のために仕事を与えてやっているんだ。ゴミがなければ、彼らの仕事がなくなっちまう」

以前、こんなことを誰かが言っていた。なるほど。

一瞬頷きそうになるが、いや、やはりそれは違うだろう。誰かのためにゴミを捨てるとか捨てないということではなく、私は自分が生活する場所や、自分の身の回りは、ある程度自分で清潔にしておきたいと思う。

どこであっても平気でゴミを落とす行為自体が、私にとっては非常に受け入れがたいのだが、そうは考えない者もいる。身に付いてしまった習慣というのは、なかなか抜けないものだ。

ストリートが汚れるのも無理はない。誰かがゴミを拾っても、拾っても、限りなくゴミは増えていく。ストリートの美化に務めている人間さえも、悪びれる様子もなくゴミを落としていくのだ。

※本記事は、2020年11月刊行の書籍『HOOD 私たちの居場所 音と言葉の中にあるアイデンティティ』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。