違ってきた未来

その日も二人は、六本木の店で飲んでいた。

「禅、店はどうだ?」
「相変わらずですよ」
「何か儲かる仕事ないのか?」
「それは、僕が聞きたいですよ」

すると剛史は急に真面目な顔になった。そして身体を前に乗り出して、周りを見回すと小声で話し始めた。

「実はな、俺、面白い仕事してんだよ」
「………」
「まあ、そのうちにデカイ事をやるから、そうしたらお前にも儲けさせてやるよ」

剛史はそう言って笑った。禅はその笑顔を見て、胡散臭いと思った。

季節は春になり、禅と一緒に入学した仲間たちは卒業し、それぞれの道に巣立って行った。禅は、もはや勉強する気にはなれず、在学している意味も無かった。

というよりも、バスケットで大学に入った禅が、バスケットを失った事で、大学にいる場所は無かった。そして禅は大学を辞めた。

禅は、六本木の外国人が集まるバーで剛史と飲んでいた。

「禅、大学を辞めたのか?」
「ええ」
「店はどうだ?」
「さすがに、もう限界ですね……親父も怒っています」
「そうか……」