くろがねの隠岐の駅鈴手に振れば 遠世の音のすずやかに鳴る
*くろがね 鉄の古い呼び名。
しめ縄に幣しらじらと八百杉の くさいろの実の鈴なりに垂る
*幣 神に祈るときに供える布や紙。
ゆうらりとお化け海月の浮かび出て 人らデッキに声あげて寄る
※本記事は、2019年9月刊行の書籍『歌集 秋津島逍遥』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。
歌集 秋津島逍遥【第57回】
“忘れえぬ旅をまたひとつ三十一文字に封印す”
――日本の面白さに旅装を解く暇もない
最果ての無人駅から、南の島の潮の香りまで、まだ見ぬ土地に想いは募る。
尽きせぬ思いが豊かな旅情を誘う、味わい深き歌の数々を連載にてお届けします。
くろがねの隠岐の駅鈴手に振れば 遠世の音のすずやかに鳴る
*くろがね 鉄の古い呼び名。
しめ縄に幣しらじらと八百杉の くさいろの実の鈴なりに垂る
*幣 神に祈るときに供える布や紙。
ゆうらりとお化け海月の浮かび出て 人らデッキに声あげて寄る
西ノ島にある名所・国賀(くにが)海岸は遊覧船で観光することができる。中ノ島は一二二一年、承久の乱に敗れた後鳥羽院が御遷幸(せんこう)された島。知夫里島には赤ハゲ山(海抜三二五メートル)があり、断崖絶壁の海岸線がつづく。