たくさん漬けた

たくさん漬けたダイコンの漬物
薄氷が張った樽の中に手を入れ
何本も持たせてくれた かあさん
「今年のダイコンは塩かげんもちょうどいい
うまいよ」

やさしい味が 噛むたび 口の中に広がった

今なら 素直に
おいしかったよ と言えるのに

写真を拡大 「秋葉」

今年の冬は

今年の冬は遅い初雪でしたが そのまま根雪になったよ

かあさんととうさんは八十歳すぎても 広い場所を雪かきして
私たちがいつ行っても 車が入れるようにしてくれていた

小学二・三年生の頃 とうさんが作ってくれた雪の坂で
スキーを長靴につけ 暗くなるまですべった
何度も転び 毛糸で作った帽子も手袋も 雪玉がコロコロ付いた
アルミの洗面器に熱いお湯を張ってくれたカネミばあちゃん
感覚のない手がジンジンジンジン すごく痛かった

今も指先が知っている

※本記事は、2020年11月刊行の書籍『もう一度かあさんの聲が聴きたい』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。