人形

「お前さ、やっぱ、おかしいよ」
「何で……」

いつものように彼女は空返事だ。

「だって、ふつう言わないぜ、女子高生が壺を見て、ステキ、シブイだなんて」
「この壺、三百万円するんだって」
「何だ、結局、金かよ!」
「あのねえ……」

鴇子は振り返ると、キッとぼくを睨んだ。

「あなたには、感受性というものがないの」
「何だよ、感受性って」

彼女はため息を一つつくと、店の中に入っていった。頭をかきながらぼくは、後に従った。まずい、どうやって取り繕おうか、鴇子を怒らせると後を引いてしまう。

店の中は思ったよりも暗く、割合と広く感じた。暗くてよく分からないが、棚が幾つもひしめいているようだった。夏だというのに、空気はひんやりとして、微かに黴(かび)臭かった。

入口の近くの棚には、二眼レフや蛇腹のカメラや記念撮影用の大きな暗箱が並んでいる。それらの多くのレンズが青く光り、戸外を見つめている。

鴇子はどこへ行ってしまったのか、この店の奥の暗闇の中に隠れてしまったようだ。目が慣れてくると、棚は複雑に配置されているのが分かった。

奥に行くにしたがって、迷路のようになっている。間口があんなに狭いにもかかわらず、店の中はずっと広く、奥がどうなっているのかも分からない。棚の間を奥に進むにつれて、ぼくにとって未知で不思議な世界が次々に現れる。