発達障がいは治療できる 診断、対処法、正しい治療を受けるために

“「発達障がい」は治療ができない難病ではありません。具体的な向き合い方、どうすれば症状は良くなるのかといった筋道はあります。早期発見・早期介入が求められるのは、治療が早ければ早いほど症状に改善がみられるからです。”医療現場の実情、最新の診断・治療法を専門の小児科医が解説していきます。

音楽が自閉スペクトラム症を救う

2006年にGold.C・Wigram T・Elefant Cが発表したところによると、音楽療法は、自閉スペクトラム症を抱えたお子さんの行動は改善させられないが、言語性コミュニケーションと非言語性コミュニケーションは改善が見られるとあります。

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つまり、音楽のリズムにより左脳を刺激することで、言語中枢を目覚めさせているのではないかと、私は考えています。ミュージック・ケアは赤ちゃんからお年寄りまで、あらゆる人たちが対象になるのが特徴です。

私のクリニックでは主に、自閉スペクトラム症のお子さん、知的発達症のお子さん、言語障がいのお子さん、Rett症候群(ほとんどの場合女の子のみに発症する進行性の遺伝病。自閉症、てんかん、特有の常同運動〈手もみ動作を繰り返すなど〉が特徴)のお子さんなどが年齢別に集まって楽しく行っています。

主な効果としては、親子や仲間との関係性の発見と改善、コミュニケーションができる、情緒の安定、不安行動の軽減、自己コントロール、リラクゼーション、集団参加の促進、注意・集中力の上昇などが挙げられます。

就学前のお子さんは親子一緒に行います。多い時で6組の親子が音楽療法士2人および公認心理師1人とともに行っています。私のクリニックは、楽しく音楽療育に通いながら医療も同時にできる点がポイントです。

ミュージック・ケアで慣れ親しんだクリニックで診療することで、お子さんの診療時の不安が減らせるというメリットもあります。

他の病院でも同じようなことを行うところがありますが、子どもだけでなく大人も参加していますし、場所もあまりにも広すぎるものが多く見受けられます。

そのようなところだと、ここに来ているお子さんは、気が散って集中できないので注意が必要です。こぢんまりとしたクリニックだからこそできるものがあるのです。

ミュージック・ケアというのは、簡単に言えば、音楽を流しながら、踊ったり、親御さんがお子さんを抱っこしたり、一緒に大きな布の下に寝たり、お馬さんごっこしたり、スカーフで遊んだりと体を動かすことが基本で、誰でも、どこでも、いつでもできます。

あっという間に1時間が経過していきます。曲はクラシックからビートルズやSMAPのようなポップスまでいろいろな曲をCDまたは生演奏で流します。

[図1]音楽療法で行うお馬さんごっこ
不安定な背中の上にお子さんを乗せて、小脳のバランス感覚を養うと同時に、お馬さんの進む4拍子のリズムを楽しく会得します。さらに、親子のスキンシップも深まります。