とうさんとかあさんは

とうさんとかあさんは 長い間 昼も夜も一緒でした

畑仕事で もめたこともあったでしょう
子供たちのことで もめたこともあったでしょう
私の知らないところで
じいちゃんばあちゃん とうさんの弟 妹のことで
もめたこともあったでしょう

乗り越えていたのですね

かあさんが元気だった頃
お正月だ 母の日だ お盆だ 敬老の日だ
何かあるたび たくさんの人が集まった
おしゃべりなかあさんは
顔を見て これも食べあれも食べと 世話好きだった

「みんな元気だったかい
この煮しめ おいしいから食べ
この茶わんむし 沢山作ったから
一個でも二個でも食べて
ゆっくりしていって」

あの頃のにこにこしていたかあさんの顔は
黒く光り輝いていた

夏の暑い日

夏の暑い日
とうさんとかあさんは
手ぬぐいで汗をふきふき
二人で草取りをしていた

少しの間 車の中から見た二人は
カゲロウのように ゆらゆら揺れていた
墨絵のようでした

声をかけずに そのまま帰った

その絵をいつか描いてみたい

写真を拡大 「陽光」
※本記事は、2020年11月刊行の書籍『もう一度かあさんの聲が聴きたい』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。