「異状死体」は「外表異状」…厚労省の英断的な発言。

病院団体の議論が進展した一つには、この医療事故調査制度の目的は、あくまでも、再発防止のためであり、「医療の内」のことに限定して行うとのコンセンサスを得たことと、その前提となった田原克志厚労省医政局医事課長発言があったからである。

同年10月の厚労省の田原克志医事課長発言は、事実上、医師法第21条の「異状死体」の判断を「外表異状」とするものであり、医師法第21条の事実上の解決と評価できた。これにより、「医療の内」の再発防止のシステムとして合意形成に至ったものである。

2012年(平成24年)10月の田原克志医事課長発言とは、厚労省の「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」に於いてなされた発言である。

①平成12年厚労省発出の「リスクマネジメントマニュアル作成指針」は国立病院および国立高度専門医療センター向けの通知であり、一般の医療機関は対象外であると明言。

また、②東京都立広尾病院事件の最高裁判決を引用し、「検案」とは死体の外表を検査することであり、外表検査をして異状があれば警察に届けるというものであると明示した。同時に、外表検査をして異状と判断できないのであれば、届出の必要はないと述べている。

この田原克志医事課長発言は厚労省の英断であり、評価に値する発言であった。

この発言を契機に、その後、2014年(平成26年)3月8日の大坪寛子医療安全推進室長の「外表異状」発言、2014年(平成26年)6月10日参議院厚労委員会での田村憲久厚労大臣発言へとつながって行き、医師法第21条の「異状死体」は「外表異状」として決着した。

これが医療事故調査制度創設の大きな推進力となったのである。