◎せん妄とは?

せん妄は急に脳の働きが悪くなり、意識に軽い障害が起こる病気です。意識の内容がおかしくなり、注意力、記憶力、判断力も低下し、時間や場所が分からなくなります。

夜間睡眠中に起こることを夜間せん妄といいます。認知症の経過中に現れることがありますので、認知症の患者さんを診た場合には、せん妄の疑い(意識障害ではないかという疑い)を持つ必要があります。

テンションがハイになり、異常に活発な精神状態になったり、困った行動をしたり、逆に反応が乏しく、じっとしている状態や睡眠の異常がみられます。しかし、それらの異常は長続きすることなく、そのうち元の状態になります。

せん妄の原因は、多様です。高齢、慢性期の脳血管障害、認知症の人で、アルコールや抗不安薬などの薬物または薬物中毒、感染症(特に肺炎、尿路感染症)、脱水状態、代謝異常、感覚遮断、心理的ストレス、内分泌の病気が原因となって起こることがあります。

その他、順不同で列挙します。便秘、長期間の睡眠不足、電解質異常(低ナトリウム血症、高カルシウム血症)、低血糖、薬物の副作用(オピオイド、ベンゾジアゼピン、抗ヒスタミン薬、抗コリン作用薬)、感染、高血圧性脳症、中毒、アルコール離脱、心不全や肝不全のような臓器不全状態、また、入院などの環境変化、睡眠不足、心理的(精神的)ストレス、痛み、かゆみ、身体拘束、カテーテル挿入などの身体的ストレスも関係します。

血液検査、尿検査、画像検査などにより、せん妄の原因が明らかになることもあり、その原因治療が最優先です。

[図2]せん妄と認知症の臨床的特徴
※本記事は、2018年5月刊行の書籍『改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。