「みんなの同意もあるので、今回は、ぼくが決めさせてもらう」そう言って早坂と沼田を見た。

二人は憔悴して地べたに座り込んでいた。

「この二人は殺人未遂を犯した。どう考えても無罪放免ってわけにはいかない。かといって死刑もさすがにどうかと思う。手を下す人も嫌だしね。あの見晴らしのいい丘に墓を増やすのは、どんな形であれ、繰り返したくない。よって、ぼくは、刑罰として――」

林は一つ息を継いだ。全員、固唾を飲んだ。

「二人に笹見平追放を言い渡す。以後、笹見平に近づくことは許さない。どこか遠く離れるように。距離は……二〇キロ以上だ」

「そんな!」沼田が金切り声をあげた。

「縄文時代にたった二人で、道具も食料も無く生きていけるわけがない。実質、死刑じゃないか」

「明日の日の出までに出ていくこと。みんなもそれでいいね」

異議は無かった。沼田の顔は恐怖に引きつり、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった。

彼は嗚咽しながら「悪かった、悪かった、一人にしないでくれ」と繰り返した。それは、常々人間グーグルの名をほしいままにした知性と冷静の人である沼田の全評価を覆す、みっともない有様であった。その横で、早坂はみじろぎもしなかった。

※本記事は、2020年7月刊行の書籍『異世界縄文タイムトラベル』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。