「私なんか有名な画は美術館でしか見る機会がないから、ましてその画がどんな価値があるものか考えたこともないし、そんな目で美術品を眺めたことが無かったわ。花帆、教えてほしいんだけど、貴女は結婚してほぼ六年になるでしょう、今、子供が二人いて、毎日の生活の中で御主人の占める比重がどれくらいある?」

「なんで、急にそんなへんてこなこと聞くの?」「将来の参考にしようと思って」

「そうね、結婚したばかりの時と今とでは月とすっぽんぐらいの差があるね。先ほども話したように主人と会話する時間は一日の中でほんの少ししかない。子供と接する時間の方がどれだけ多いか比較にならないよ、だから主人は〝空気〞みたいな存在かな。大事なときにいてもらわないと困るから、そんなもんよ」

「そうなんだ。詰まんないね、恋愛している期間が〝花〞だね、私もよく考えてみる」

美代子は話を聞いて少しがっかりした表情を見せた。

※本記事は、2020年11月刊行の書籍『揺れ動く女の「打算の行方」』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。