却下すべきと判断した「三つの理由」

普通は、震災前の決算書類に会社の償却資産として計上されているはずである。

減価償却が済んで帳簿から落ちている場合でも、固定資産台帳でいつ償却が完了したか調べることができる。ところが、そのような記録は一切ないのだ。購入した記録も一切ない。理由は「別の会社からもらったものだから」ということであった。

私はI社の担当ではなかったし、自ら調査したわけではなかったが、耳に入ってくる話をきいてI社の補助金申請は却下すべきだと進言した。

しかし、私の進言は受け入れられずI社に対しては交付決定がなされた(私はI社の事業が完了する前に宮城県を退職しているので、I社が決定どおり補助金を受領したかどうかは知らない)。なぜ交付決定されたかを述べる前に、私が却下すべきと判断した理由について説明したい。

第一に考えたことは、I社は地下タンクを所有していなかったのではないか、ということだ。復旧すれば1億円もかかるような設備が会社の資産として計上されていないということは、普通は考えられない。贈与であっても、金銭的価値があるのなら計上しなくてはならない。

また、別の会社からもらったのであれば、運送費用、設置費用がかかっているはずで、それを経理処理した事跡もない。ただし、実際には所有していたのだが、何か事情があって帳簿に記載していなかったのかもしれない。だとすれば、次に考えたことは、その地下タンクは被災していなかったのではないかということだ。

私は別の運送会社を担当していて、その会社が被災した設備のなかに「地下タンク」を記載していないことに気がついた。I社のことがあったので、私はその会社の社長に地下タンクは被災しなかったのかと訊いた。社長が言うには、「地下タンクの本体は地下に埋められているから何の影響もなかった。ただし、地上に出ている付属設備は津波で一部破損した。それはすぐ修復できたので補助対象の設備には入れなかった」ということだった。

以上の二つの理由、①地下タンクを所有していたことが確認できない、②「所有していたとしても被災したとは考えにくい」、「被災したからではなく経年劣化のために処分したと考えられる」から補助対象にならないと判断したのだが、実はもう一つの理由、第三の理由があった。

それはまったくもって非論理的な話なのだが、こういうことだ。