その日の手術を終えると、再び回診に向かう。今日もあと少しで1日が終わる。夕方の回診の時、僕はいつもそう思っていた。

病棟の詰所のカルテに自分のIDとパスワードを入れてログインする。回診前に、看護記録を読んでその日の患者さんの様子について簡単に確認しておかないといけない。自分の担当患者一覧の画面を開く。

(そういえば、創感染の人はどうなったのだろう)

すっかり忘れていた。カルテを開くと、『臍部創感染 切開ドレナージ施行 しばらく抗生剤点滴を行う 荒木』と記載されていた。ドレナージとは、創の直下の皮下組織や腹腔内などの外気から遮断された閉鎖空間に感染が起こって膿瘍などを形成した場合、創を開いたりドレーンと呼ばれるチューブを入れたりして膿瘍を外に排出する処置のことだ。

(ヤバい。どうしよう)

もうすでに処置がされている。僕は慌てて荒木先生の電話を鳴らす。

「もしもし」

声がすでに怒っている気がする。

「〇〇さんの創ですが、もう処置していただいたみたいで、報告できなくてすみません」