苦手なこと

「お臍のところが少し痛むのですが」

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ある朝、回診で荒木先生と一緒に担当している患者さんのお臍の創を診ると、赤く腫れていた。これは創感染だ。処置が必要である。

「荒木先生はもう来ましたか?」
「いいえ、まだです」
「処置が必要になると思うので、荒木先生と相談して処置させてもらいますね」

すぐに荒木先生に報告しようかと思ったが、創感染は急を要する状況ではない。前の件でPHSには連絡しづらいということもあって、直接会ったタイミングで荒木先生に相談することにした。

僕は自分の担当患者さんの回診を続けることにした。回診を終えると、カルテを記載する。

病棟のカルテは看護師さんと先生で全て埋まっていたため、医局に戻ってカルテを書くことにした。この間、荒木先生の姿は見当たらなかった。

『臍部創(さいぶそう)に発赤腫脹(はっせきしゅちょう)、痛みあり 創感染疑い 山川』

先ほどの患者さんのカルテにはこう書いておいた。担当患者さんは20人以上いることもあり、誰がどんな状況かが分からなくなることがあるため、自分のためにもしっかり記載しておく必要がある。

カルテを書き終えると手術が始まるまでの間、予習をして過ごす。病棟の業務も大事ではあるが、外科医の仕事のメインはあくまでも手術だ。すぐに手術に頭を切り替えた。