“何かに打ち込み、努力をして頑張った事の無い奴が、良く偉そうに言えるな! お前はトップを取った事があるのか?”

禅は、そう思うと、まじまじと剛史の顔を見た。そして、こいつはとことんバカだと思った。そして、バカだからそんなセリフを吐けるんだと呆れかえった。禅は更に追い打ちをかけた。

「でも、将太君は強かったですよね、番長ですからね」

それを聞いて、剛史の顔が引きつり、マズイという顔になった。そして、チラリとガキの顔を見ると、怒りの表情に変わった。

「あ? お前、何言ってんだ? あいつはバカなだけだ、仕切っていたのは俺だぞ!」
「そうなんですか?」

禅は理解した。剛史が、つるんでいるガキたちに、自分が一番凄かったと吹いている事を……本当の事を言われて焦った剛史はまくし立てた。

「あいつはバカだからな、俺が抑えないとどうしようもない。お前も、将太に殴られた事があっただろう?」
「ええ、まあ……」
「あいつは、ただのバカだよ、バカ!」

禅は思った。

“仕切っていたのは俺だぞ? 誰が見ても分かるような嘘をよく平気で言えるな! こいつは本物のクソだな!”

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『アリになれないキリギリス』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。