たまたま私の横にいた6、7人の女子グループ。高校生ぐらいだろうか。ベンチのど真ん中に足を組んで座っているその女の子(以下、クール)は、仲間の会話に黙って耳を傾ける。冗談に笑ったりもするが、口数が少ない。

人を食ったようなその態度には妙な存在感が漂う。遠くを見るような冷たい目に、激しい攻撃性とすべてを見透かしてしまいそうな鋭さがある。

彼女の左端に落ち付きなく座っているブレイズヘアの女の子(以下、ブレイズ)。ガムをクチャクチャと音を立てて噛み、ときに風船を膨らませたりしながら大声で喋る。

彼女から感じられる気の強さと男の子顔負けのワイルドさに思わず圧倒されてしまう。一旦、弱みや隙を見せたら、とことん食い尽くされてしまいそうだ。

私はこの日、Hoodの様子を一枚一枚写真に収めていた。私には、彼女たちの表情や仕草がこのHoodで生きる10代の女の子たちの姿をよく表しているように思え、非常に惹かれた。

特にこういった地区では、人々は写真に対して非常に神経質になる。無断で写真を撮ることは極力避けたい。私はかなり迷ったが、彼女たちに思い切って「写真を撮らせて」と頼んでみることにした。

※本記事は、2020年11月刊行の書籍『HOOD 私たちの居場所 音と言葉の中にあるアイデンティティ』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。