ブルーストッキング・ガールズ

多佳が藤枝のお茶問屋に嫁ぐと伝えられたときには、少女たちは美津の部屋に集まり、門屋のきんつばとサイダーで祝杯を上げた。多佳は中途退学にはなるが、三人には結婚ということが羨ましく、悔しくも思えた。

同時に、彼女の未来が最も拓け、多佳にとってそれが最もふさわしいことのように思えた。晴は、看護婦になることをそこで宣言した。喜久も、教師になるんだ、と三人をじっと見つめて言った。

美津ははじけるような無邪気さで叫んだ。
「私は船に乗って、フランスに行きたい! ロンドンに行きたい! ベルリンに行きたい! いろいろなものを見つけたい! 自由を見つけたい!」

美津が亡くなったのは、それからひと月後のことだった。何日か秋冷えが続いた後の小春日だった。離れのガラス戸は開け放たれ、庭の紅葉が赤く輝いていた。喜久と晴は学校を休んで美津の枕元にいた。

美津の部屋は不思議なぐらい明るかった。

静かな寝息をしていた美津は、ふと覚醒し、薄く目を開けて喜久と晴を見た。
「たのしかったね」と言って静かに目を閉じた。

「二時十三分。ご臨終です」

医師が告げると、美津の母は何かを吐き出すように大声で泣いた。孝太郎も大きな体躯を震わせて嗚咽した。

喜久と晴も、一生分の涙を流した。