もう四十じゃない! まだ四十よ!

K先生は、検査結果の用紙を澄世に渡した。Ⅰ、Ⅱ、Ⅲa、Ⅲb、Ⅳ、Vと並んで書かれてあり、Ⅲbに丸がしてあった。細胞診のクラス分けで、Ⅳ、Vなら、ほぼ癌だと書かれていた。

「……子宮を取るんですか?」
「そうです」
「普通は縦に切りますが、傷が目立たないように、横に綺麗に切ってあげます」と、K先生は自信ありげに言った。

「嫌です! 偽陽性と仰ったじゃないですか!」
澄世は自分でも驚くほど、強く反発して言った。

「でも、もう四十ですから」
K先生が、また年齢の事を口にした。澄世は心の中で、まだ、四十よ! と叫んだ。
「わかりました。では、今日もう一度、検査してその結果を診て判断されたらどうですか?」

「……」
澄世は黙って頷いた。

「では、隣へ」
K先生は、スッと立ち上がって、澄世に言った。

子宮癌には、子宮頸癌と子宮体癌の二つがあった。一般的な子宮頸癌の検査は、膣を綿棒でこそげるだけの検査だった。だが、そもそも性交渉のない女性はかかる事がないのを、澄世は調べてあとで知った。

男性器に付着しているヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染から起こる癌だった。それとはちがい、子宮体癌は乳癌との関連を指摘されている癌で、検査は、子宮内膜の細胞を採取する痛みを伴うものだった。

自分でも、よくあの拷問のような検査を、またする気になったものだと、澄世はあとから、つくづく思った。二度目も、やはり酷い痛みだった。結果は年明けだった。どうか、Ⅰでありますように! 澄世は祈った。自分の処女を奪ったK先生を憎らしく思った。